2006年・気まぐれ小説
番号 月日  題名 作者 発行者・年度 寸評
1 1/17 13人目の審判 ジョン・T・レスクワ

・1996年6月
・早川書房
・西京図書館
・「ディズマス・ハーディ・シリーズ」の第4作目。
・サンフランシスコ市の閑静な住宅街、裕福な医師と息子が射殺され、容疑者は医師の若く美しい妻、ジェニファー。
・新米弁護士・ハーディーはジェニファーが夫に虐待されていた事を知るが法廷で主張すれば判例ではおおむね無罪であるが・・・。
・虐待を訴えれば犯行を認めるのも同然と言って拒み続ける。
・法廷内での息詰まる論争で「手の汗を握る」駆け引きが面白い。
2 1/22 恐怖の審問 ポール・ギャリコ
・2005年10月
・新樹社
・西京図書館
・「ポセイドン・アドベンチャー」の原作者でもある作者の本。
・アメリカとソ連の冷戦下にあるヨーロッパを舞台にハンガリーでスパイ容疑で逮捕された新聞記者の救出模様を描いています。
・描かれている「鉄のカーテン」の向こう側の思想、謀略そして「被告の証言」を引き出す方法は全て「現実」です、と作者。
・肉体的、精神的拷問の描写には「息を呑み」ました。
・結末が爽やかなのが救いです。
3 2/1 無事、これ名馬 宇江佐真理

・2005年10月
・新潮社
・弟より借りる
・「頭、拙者を男にしてください」と泣き虫、弱虫の武家の長男が弟子入りしたのは町火消し「は組」の頭取。
・火事になれば、命と意地をかけて火事場を収める男達の生き方に触れて少年は大人への道を踏み出していく・・・。
・逞しさが爽やかな読後感を残す時代小説。
・太郎左衛門の伯母のヒトコト・ひとことに共感。
・孫を持って初めて分かります。
4 2/18 容疑者Xの献身      東野圭吾
・2005年11月
・文藝春秋
・古本市場で購入

・高校の数学教師が好意を抱いている主婦の殺人の後始末と刑事の聞き込み捜査に綿密な計画でかばい立てをするが・・・。
・最後の場面、主婦が自首し刑務所に訪ねて来る事はさすが頭にはなかったのですネ。
・今年の直木賞受賞作品ですがアッという間に読みきりました。
・数学教師の大学時代の物理学者との心理戦争でのかけひきも面白かった。
5 2/19 マチャプチャレ遠望 佐本昌平
・2003年9月
・ウインかもがわ
・S氏より借りる
・2週間、ネパールのトレッキングを1日1章にまとめた旅行記で自費出版されました。
・丁寧な文章でやさしく書かれて読みやすかった。
・テント係り・食事係り・運搬係り・リーダーと現地の人はそれをナリワイにしているのですね。
・トレッカーは軽いリュックでいいらしいですが2週間、風呂無しに耐えられるか?
6 3/17 狐官女 澤田ふじ子

・2005年11月
・光文社
・弟より借りる
・土御門家・陰陽事件簿で京を舞台の京都弁がやさしい「心の闇」に光を当てる小説。
・主人公は小藤左兵衛、元大垣藩士で今は長屋で「扇骨削り」や時より「易」をしているが「徒然草」「閑吟集」「沙石集」が愛読書。
・「悩む者は救わねばならぬ」と庶民の目線で事件を解決する心情がページを貫いています。
・読後がさわやか。
7 4/1 マルヴェッツイ館の殺人 ケイト・ロス
・2000年7月
・講談社
・図書館
・アガサ賞・最優秀賞受賞作品。
・ロンドン社交界一のダンディ
「ジュリアン・ケストレル」がミラノ貴族第一人者「ロドヴィゴ・マルヴェッツィ」殺人事件の真相に迫ります。
・公爵夫人が言います。
「あなたはフランス人のようにお口が上手、ドイツ人のように理性的、イタリア人のように音楽を愛する、なぜそうまでイギリス人なの」。国民性をつかんだセリフにナルホド。
・ミラノ・スカラ座のオペラ鑑賞のシーンもリアルに表現されオペラファン必読。
8 4/13 カリフォルニア・ガール T・ジェファーソン・パーカー
・2005年10月
・早川書房
・図書館
・アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作品。
・1968年10月、カリフォルニア州の都市タステイン。頭を切り落とされた若い女性の死体が発見され、部長刑事ニック・ベッカーが急行した。
・変動するの1960年代のカリフォルニアを背景に兄弟の絆、家族の崩壊、男女の愛憎を情感豊に描き出す。
・誤認逮捕で36年間の刑に処せられた男性を救ったのは「よけいな事」だったか?
・世の中の「負の部分」から目をそらせないでいる人間が多く登場するのも魅力。
9 4/22 愚か者死すべし 原 寮

・2004年11月
・早川書房
・古本市場
・私立探偵・沢崎、新シリーズの第一作です。
・警察組織、暴力団組織、政界の裏側に蠢く人間の中に入り込み犯人を追いかける一匹狼の探偵が真相を追います。
・必要経費以外の金は「いらない」と今時めずらしい一人暮らしの探偵が「携帯電話機」を持ってないのもフシギ。
・文が固くて読みずらく、少し歯切れが悪いようでした。
10 4/25 スクリーンの向こう側 戸田奈津子
・2006年4月
・共同通信社
・Nさんより戴く
・映画字幕の第一人者の戸田奈津子さんが語るリアル・ハリウッド。
・映画は「三度のご飯」より好きだけれど評論する客観性に欠ける彼女が、月に一度、ミーテイングで話した事を原稿にまとめたのがこの本である。
・字幕をつける苦労話、スターの横顔、こぼれ話が面白くアッという間にページが終わります。
・ニコラス・ケージの伯父がフランシス・フォード・コッポラ監督だったとは!
11 5/3 単独捜査 ピーター・ラヴゼイ
・1995年5月
・早川書房
・古本市場
・元警視ピーター・ダイヤモンド。ロンドンのハロッズ・デパートに警備員として雇われたが閉店後の事件で失職させられる。
・夜の家具売り場で発見されたのは自閉症の日本人の少女、境遇に同情して親探しに乗り出すが・・・。
・ロンドン、ニューヨーク、日本が舞台で事件の真相に迫るに従って危険を迫ります。
・前半に緊張感がありましたが後半は少しダラケました。
・自閉症の少女に対する主人公の「眼差し」の優しさにホッとします。
12 5/18 紙の迷宮 デイヴィッド・リス
・2001年8月
・早川書房
・図書館
・1719年のロンドン。元ボクサーの調査員ウィーヴァーのもとに男が訪ね来て自殺したとされる父親が殺された疑いが強いと言う。しかも事故死したウイヴァーの父親も殺害され、二つに死には関係があると言う。
・アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞した歴史ミステリー。
・草創期の株取引にからむ謎を壮大なスケールで描いていますが行間の中に溶け込みにくくページを繰るのに苦労しました。
・物語の中でエライアスが教える蓋然性の法則はパスカルの数学理論に始まり、手がかりから結論を導き出すという考え方は株取引が盛んになった結果生まれたもの。
13 6/6 起訴 バリー・リード
・1996年3月
・早川書房
・図書館
・後味の良いスカッとする本でした。
・若い女性が殺害されエリート医師に嫌疑がおよびシェリダンに弁護が依頼される。ここで繰り広げられるのは裁判の前段階、彼を起訴すべきか否かが審理される「大陪審」の法廷場面である。
・シェリダンと女性FBI捜査官「シェイラ・オブライエン」の正義感と大人の恋もありで後半はページを繰るのが早くなりました。
14 6/7 還暦ルーキー 平山譲
・2001年4月
・講談社
・Oさんに借りる
・60歳になってからプロゴルファーのテストに合格した「古市忠夫」プロの誕生秘話。
・阪神大震災で・家・店・友をなくし、逆風だから「がんばれる」と好きな道を突き進んだ同時代の男性に拍手喝采・・・
私には出来ませんが・・・。
・消防団員、自治会長をやりながらですヨ。
・やはり「内助の功」がありました。
15 6/12 国家の品格 藤原正彦
・2005年11月
・新潮新書
・N氏より
・最近のベストセラーの中でもランクは常に上位である。
・わかり易い言葉で簡潔に書いてあるので読みやすく理解しやすく、K総理の国会答弁のようでした。
・全てにおいて賛成しがたいが「ウン、ウン」とうなずく事しきり。
・品格ある国家の指標とは
1、独立不羈
2、高い道徳
3、美しい田園
4、天才の輩出
と作者の弁です。
・読んで損はありません。
16 6/14 日の輪 第五輯 日の輪句会
・2006年4月
・株式会社
 東京四季出版
・U氏より頂く
・句会は発足して25年、5冊目の句集で継続は「チカラ」です。
・23名の方々で240篇が掲載されています。
・たまに読む俳句は気ままでよいでしょうが毎月、数句を作らねばならぬ・・となれば又別の感情で日頃の苦労がしのばれます。
・語彙の少ない私には別の世界です。
・新聞の「俳句」欄は楽しみの一つです。
17 6/27 罪の段階 ルチャード・ノース・パタースン

・1995年10月
・新潮社
・図書館
・上下2段のP−550の長編でしたが内容に吸い込まれるように読みきりました。
・弁護士のパジェットは元妻がレイプされ犯人を射殺した事件の弁護を引き受ける。
・リーガル・サスペンスの名作「推定無罪」と肩を並べるほどの素晴らしいエンターテイメント。
・息子を傍聴席に呼び「母」の裁判を全身で体験させる父親の愛情、(後半で実の子供ではないことが分かりますが)同僚の女弁護士との淡い恋も絡んで後味の良い小説でした。
18 7/4 チーム・バチスタの栄光 海堂 尊

・宝島社
・2006年2月
・古本市場で買う
・第4回2006年「このミステリーがすごい」での大賞受賞作品。
・こんな受賞作品に読む意欲が沸いてくるのは自らが事前知識がないのが一番の理由ですが・・・。昔から権威付けに弱いところがあったかも知れません。
・医療過誤か殺人か、万年講師と厚生労働省の変人役人が「死」の謎を追います。
・手術現場のリアリティとコミカルな展開は「暑い夏」を過ごすにはぴったりの作品でした。
19 7/15 ブルー・ドレスの女 ウォルター・モズリィー
・早川書房
・1995年12月
・図書館
・英国推理作家協会賞新人賞、アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作品で映画化名「青いドレスの女」の原作。
・1948年のロサンゼルス。失業中の黒人労働者イージーは家のローンを返済する為、美貌の白人女性ダフネを探し出す仕事を引き受けるが・・。
・ナイフ、拳銃、暴力、白人、黒人、メキシコ人、警官が入り乱れてのハードボイルド作品で「夏の暑さ」も忘れて読み進みますが人種差別以外あまり残りません。
20 7/19 あなたに不利な証拠として ローリー・リン・ドラモント
・早川書房
・2006年2月
・図書館
・2005年MWA賞の最優秀短編賞に輝いた「傷痕」ほか9編を収録する本。
・現題はアメリカの警察官が犯人逮捕の際に告知を義務付けられている、いわゆる「ミランダ警告」からとられている。
・ルイジアナ洲バトンルージュ市警勤務の女性警察官5名の一人ずつにスポットを当てた短編が行きつ戻りつ彼女らの日常生活を浮き彫りにして行く。
・図書館で予約してから約2カ月待たされましたが4日間で読み終えるほど引き込まれました。
・女性警察官の日々を赤裸々に描き生々しい匂いや手ざわりを写実的かつ生理的に表現していました。
21 7/23 ジェイムス・ジョイスの殺人 アマンダ・クロス
・講談社
・1998年2月
・図書館
・ジェイムス・ジョイスはホメーロスの「オデュッセイア」の構造を借りて「ユリシーズ」を書き上げたアイルランドの作家である。
・ヒロインのケイト・ファシズラーは大学の英文科教授で持ち前の善意からいつも思いがけない事件に巻き込まれてしまいます。今回も避暑地の別荘、ジェイムス・ジョイスの書簡を整理しているときに殺人事件が起こる。
・本格派好みの本ではないが登場人物たち交わす知的でウィットに富んだ会話でなりたち、文学的教養と人生に対する深い洞察がふんだんに散りばめられそれが自然でいや味が無い。
・軽く読み流す事ができる爽やかな小説。
22 8/2 デセプション・ポイント ダン・ブラウン
・角川書店
・2005年4月
・図書館
・ご存知ダ・ヴィンチ・コードの作者の小説である。が犯人が「一番身近にいる」というのには推理小説ファンとしては許しがたい。
・たしかにスケールも大きく各種科学知識の豊富さには脱帽しますが・・・。
・ラジオを聞き流しながらでも読める本である。
23 8/16 翡翠の家 ジャニータ・シェリダン
・創元推理文庫
・2006年5月
・図書館
・1940年代のニューヨーク、ハワイから来たジャニス・キャメロンは住んでいる下宿先から追い出されかけ「部屋求む。ルームメート応相談」と個人広告を出す。それをみて電話をくれた中国系女性リリー・ウーとワシントン・スクエアにあるアパートメントで生活を始める。
・楽しい共同生活が始まる・・・はずだったが、入居するやいなや、リリーは何者か殴られれ負傷、地下室には新任管理人の死体が。
・生まれた国の違う男女、職業もイロイロ、個性ある趣味の男が生き生きと描かれ、ユーモラスな語り口で楽しく読み終えました。
24 9/23 愛の流刑地
(上)(下)
渡辺淳一
・幻冬舎
・2006年5月
・弟より借りる
・数年前に「不倫」現象や本が
流行になりましたがこの本は続編のようでページを閉じたくなりましたが・・・。(下巻)で一工夫。
・中年の男性、30歳代の3人の子持ちの女性が密会を重ねて究極の「愛の形」を見つけます。がまさか?死ぬとは?
・殺人罪で8年の刑に処せられますが控訴をする事なく彼女との思い出を胸に「流刑地」に留まる決意をしてオワリ。
・ヒーローが人妻との体験をテーマにした小説・Fに捧げる・「虚無と熱情」が大ヒット。まさに愛の結晶でした。
・人間は「思い出」や「作品」があれば強く生きられますネ。
25 10/1 風の盆・幻想 内田康夫
・幻冬舎
・2005年9月
・弟より借りる
・「夢で逢えればそれでいいと
伏せた笠の緒 オワラ 濡れている」。
・哀切な胡弓の調べと幽玄な踊り八尾の「風の盆」祭り。その直前、老舗旅館の若旦那が謎の死を遂げた。
・名探偵「浅見光彦」と迷作家「内田康夫」が鮮やかな推理競演と帯に書いてありましたが読後の印象は薄かった。
・ただ「風の盆」には一度は行こうと思いましたが・・・。
26 10/18 名もなき毒 宮部みゆき
・幻冬舎
・2006年8月
・弟より
・財閥企業で社内報を担当する杉村三郎はトラブルを起こした女性アシスタントの身上調査のため私立探偵・北見のもとを訪れる。そこから・・・。
・女性アシスタント、現代娘の人物描写が生き生きと描かれ、翻弄される中高年の姿が眼に浮かんで来ました。
・人間がいれば「毒」が出来、少しの出来心で人を殺めてしまうのが今の社会でしょうか?
・摸倣犯が出なければ幸い。
27 11/12 立証責任(上、下) スコット・トゥロー
・文藝春秋
・1993年9月
・図書館
・刑事弁護士スターン、経済的、職業的に何不自由ないうえ、控えめながら毅然とした妻クララが家庭を守ってくれていたが・・・。
・妻の自殺事件、商品先物取引界の大物の弁護とその周辺の謎、一生を通じて妻しか知らなかった男が夫婦の絆を断ち切られた孤独感。
・前半はやや退屈な感じですが後半一気に謎解きがはじまり納得。
・ミステリーでありながら人間心理の内奥まで深く探る作者の筆力に脱帽。
・家族の絆と法律について考えさせられます。
28 12/8 恐怖の存在
(上、下)
マイクル・クライトン
・早川書房
・2005年9月
・西京図書館
・環境テロリストとそれを追う対テロ組織の攻防です。
・舞台はフランス、マレーシァ、イギリス、日本、カナダと世界各地を飛び本筋に入ってからもアイスランド、ロスアンジェルス、南極、アリゾナ、ソロモン諸島とめまぐるしく移動。
・その分登場人物の掘り下げがたらず上っ面な人物像になって感情移入が出来なかった。
・地球温暖化は排気ガスの為か?
著者は言っていますが・・・。